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詩「ロープ」

ある日、しとしとと雨が降る憂鬱な天気、駅のホームを抜けて空を見たら、高層ビルぐらいの大きさのサラリーマンが首を吊って死んでいた。
彼を吊るす長いロープは空の遥か彼方に伸びており、一体どこからぶら下がってるのか見当もつかない。
幸い彼のつま先はショッピングセンターの頂上よりも遥かに上にあったので、われわれ庶民が地上を歩く分には何の支障も無さそうである。

しかし毎日毎日、行きも帰りもサラリーマンの死体を見ながら通勤というのも気持ちのいいものではない。
見るのも鬱陶しいのだからロープを切ってしまいましょう、そんな声が上がったこともある。
そんなことをすればサラリーマンの巨体がこの街に落ちて、阿鼻叫喚の大災害を招くこと間違いなしだ。

だいたい何で死んでしまったのか。
身勝手なやつ。そんなに体が大きいのだからもっと周りを考えて死にやがれ。
そんな声も上がるようになったが
死んだ男だって見る限り元は普通の人間、まさか自分の体がここまで大きい姿で吊るされるとは夢にも思わなかったことだろう。

結局、誰も何も打つ手がないと
街の人たちは諦めて慣れることにした。
これは実は地域の名物だったのだ、ここは太古の昔から首吊りの男がぶら下がっている、そんな愉快で面白い街だったのだ、
と過去と良識を塗り替えてまで街の人は必死に日常を取り戻そうとした。

ひもがいつ切れるのかはわからない。

2018-07-06
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