朝のコンサートの前に軽く朝食を済ませよう・・・ディケンズはそう思い近くのダイニングレストランに向かう。レストラン内はクラシック音楽が流れていて、今はパッヘルベルのカノンである。ディケンズは腰を下ろし、自身の商売道具たるヴァイオリンケースをその側に置く。そしてパンとサラダとエッグとコーヒーを注文し、新聞を読み始める。
どうやら近頃、人が突然悲鳴を上げながら死ぬという奇怪な現象がこの街で頻繁に起きているようである。化学薬品なのか細菌なのか、あらゆる原因を調査しているものの全く不明で、未だ解決されていない。これで3人目ということなので、まったくどうにかならないものかね、と思いながらディケンズは新聞をめくる。が、ふと思い当たってふたたび怪現象の記事を読み返す。犠牲者がどれも似たような顔をしている。どれも、どこかで見たことがあるような顔だ。
しばらくしてなんだか気が重いなと思っていたが、よく耳をすますとその答えはわかった。店内で流れている音楽がいわゆるバッハのG線上のアリアだったからだ。ディケンズはそれを訊いて、何かを思い出してため息をついた。 (さらに…)