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「波の唄(2022)」「地中の骨たちのラプソディー(2022) 」@公園通りクラシックProject 佐藤紀雄プロデュースシリーズ Vol.10

波の唄(2022)
唄:木村麻耶

地中の骨たちのラプソディー(2022)
ギター:佐藤紀雄

地中の骨たちのラプソディ 石川潤

瓶詰めの魚の漬け物が腐敗し、よくわからないイソギンチャク状の生き物が瓶に付着するようになったので、仕方なく僕は庭の地中に埋めて処分した。
瓶の隣には鳥のような形の骸がうめられていて、その骸と腐った瓶詰めは永遠に他愛のない会話を続けていた。
それはいったいどのようなやりとりなのだろうか。我々人間のように神経も魂も生命も持たぬと言うのにそれらはコミュニケーションを取り続けている。
否、もしかしたらそれは傲慢な考えで全てには意思が宿り何かしらのエネルギーの交換をしているのかもしれない。
我々が己に魂を有すると信じているこの感覚も人間の種が生み出したただの構造かもしれない。
楽器を爪弾きそこに物語を感じる行為もある種同等かもしれない。
特に、作曲された曲自体は一つの構造体・ロジック・遺伝子に過ぎず、魂どころか実在するかも分からない代物である。
呼吸を必要としない楽器が歌う、永遠の歌。
幾多もの声部に分解される、一つであり全ての歌。
次第に衰退していく声部は、微生物に分解された死骸のごとく、地中の一部となって全体を支えていく。

地中の骨たちは静かに世界そのものを見つめ、魂のないありのままを私たちに語りかける。
私達は存在する、と。
存在こそがエネルギーであり、魂の実在を信じるお前たちへの虚無を提示するのだ、と。