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パフォーマンス「Aether」に寄せる、私の解説文

2017/07/09公演しましたAetherは、奥田ナオト展のテーマでもあります「五方陣」「透明な光」を汲んで、宮沢賢治の「生徒諸君に寄せる」を用いて朗読とダンスと音楽でコラボレーションしたものです。

全体の設計は皆でアイデアを出しながら作りましたが、わたくしは作曲家の視点から様々なアプローチや演出をこの作品に行っております。

宮沢賢治は科学・テクノロジーへの興味を示し人間のたましいを電気信号に例えるような視点を持ちつつも、自然への讃歌を常に絶やさないソフトSF的な感性が感じられます。

また戦争の時代でもあり抑圧への抵抗と自由への夢想が特に今回用います「生徒諸君に寄せる」には強く感じられます。

こうした独特な憂鬱さからテクノロジーとたましい、社会と個人と言った問題に悩む現代日本に響くものが宮沢賢治の詩には未だにありましょう。

現代のAIは大まかに見れば人間のある識別・行動パターンつまり魂の一部をコンピューターに移して半永久的に繰り返すものであります。

この作品に使われるAIは非常にシンプルかつ一部にしか使用されませんが、私の好むパターンを繰り返したいわば魂の一部です。

その魂の一部たる“私”は、即興演奏を行う私自身との分離を始めます。

このようにこの作品の音楽は、異なるジャンルとのコラボレーションという形でも魂を分け、そして音楽自身も魂を分離し、音楽そのものがもともともつ時間を操作する抑圧の力がスポイルされます。

音楽自身は何によって支配されてるかというとそれは“無音”だと思います。無への思いが私の一つのテーマなのです。

無があって音がある。つまりそれが、透明な光であり、五方陣の一つとして朗読とダンスなどの異なる分野、そして聞きに来る皆様との思索的なコラボレーションを試みるのであります。

これはあくまで音楽としての思いであり、このAetherのすべてを説明するものではありません。

実際に何がおきるか?それは2017/07/09/16:00-横浜で、皆様の目で確かめる事が、出来るのです。

“Aether” in 岩崎ミュージアム